先ほどのステアケースから約10㎞。時間にしたら十数分。
ツイントリップとコマ図がピッタリ一致して、気持ちよくナビをしていました。
何といっても、あの井入選手が私の言いなりに、右に左にとクルマを走らせてくれるんですよ!!
コマ図通りに左に曲がると、青々と葉の茂った畑の中の、見晴らしの良い一本道となりました。
そして、175.01㎞地点に窪みがあり、それを越えて道は続いているはずでした。
窪みがあるであるであろう茂みのあたりで、
先ほど私たちを抜かしていった赤いトライトンが、身動きが出来なくなって、もがいていました。
???
ここまで確かにコマ図はあっていたし、道は間違いないはず。
コマ図に書いてある窪みが、思ったよりも深くて先に進めないのか?とも思いましたが・・・
「この先に道がない!」
茂みの先はただ土手があるだけで、道らしきものは見当たりません。
コマ図通りなのに、なんでこの先に道が無いの?
コマ図が違ってる?
アジアンラリーでは、まれにコマ図の距離が違っていたり、抜けていたりすることがあります。
距離が違うのは、コマ図をもらってチェックした時に区間距離と総合距離の計算で気がつくこともありますが、
何百コマとあるコマ図の数字を1つ1つチェックはしきれません。
(もちろん、なかにはチェックする人もいるようですが)
そしてコマ図を読みながら、走っている最中にトリップメーターとコマ図の距離が合わずに
「???」と思い、数字を確認すると「!!!」と気づくことも。
ナビゲーターはそんな時でも慌てず騒がず、何事も無かったようにドライバーに悟られないように、
道案内をするのが経験と技術ってもんです。
まぁ、私の場合は大抵は悟られがちですけどね!
ともかく、この試練は競技者全員が同じように受けるわけです。
私たち競技者はどんな困難な状況であれ、ゴールを目指すのが、クロスカントリーラリーなのです。
ラリーカーを停めて、#15のトライトンの近くへと向かいます。
緩やかな下り坂で、路面状況はヌタヌタ。
歩くにつれて、靴に泥がまとわりついで足元が重くなる感じ。
身動きできなくなったトライトン、二駆になってしまって自力では脱出不可能の様子。
どうやって、このトライトンを引き上げたらいいものかと思案していると、
コマ図通りにやってきたバイクやラリーカーも次々とこのポイントへやってきました。
そして、トライトンがスタックしているのを見て、コマ図通りに道が無いのを知り、
正しい道を探してクモの子を散らしたように、見晴らしの良い畑の道に散らばって行きました。
ナビのRoslyn SHEN選手が、助けを求めています。
コマ図が違おうが、なんだろうが、今はとにかくトライトンを引き上げなければ!
ですが、スタックしたトライトンのドライバーの青木選手は
「ええから行けって!」
といって私たちに競技を優先し、先を急ぐように言いました。
特に、クラス優勝がかかっている浅井選手のパジェロに先に行くように言っていましたが
我がチームリーダーを見捨てられるわけないじゃないですか!!
その時の青木選手の様子について、川脇選手によると
「捨てられた子犬のような目をしてはったで~(笑)」。
とのこと。
AXCR2012 LEG3 SS3-1.2
↑↑↑ この動画を取った後で、カメラの電源を、
うっかり切り忘れてポケットに入れっぱなしになっていて、音声のみが入った動画がコチラ
カメラで撮ることを意識していない、その時のそのままの音です!!
これはこれで、貴重かも!?
私たちのトライトンと、パジェロの2台でトライトンを引き揚げます。
しかし、2駆になったトライトン、そう簡単に上がりそうにありません。
こんなときに、自分にレスキューの技術があれば!!と悔しく思い、
また、トライアングル号が来てくれたら!とも願いました。
ちなみにこの時、2台のトライアングル号はニ駆になったバンディットを
レスキューしていました。。。。
We love Bandit 2012 AXCR
スタックしたトライトンを引っ張っても、こちらが引き寄せられてしまうような状態の中、
タイヤだけがその場でむなしく泥をかき、さらに深く埋まっていくだけ。
時間だけが刻一刻と過ぎていきます。
先ほどまで、他のラリーカーやバイクが遠くで右往左往している様子が見えていたのに
もう、その姿も音も感じられなくなってしまいました。
タイのいなかの畑の中、私たち以外のだれの気配も感じない農道に静かに風が吹いているだけ。
一瞬、全ての音が途切れて耳の中が「シン・・・」としました。
もしかしたら、このままトライトンを上げることは不可能か?という不安が表に出てこないように
7人と2台の四駆があれば絶対に上がるはず!と自分を奮い立たせました。
そして、ウインチを使ったり、トライトンの荷台に人が乗って荷重をかけたりと、
出来る限りのことをして、スタックしたトライトンをなんとか茂みからは引き上げることが出来ました。
しかし、2駆になってしまったのトライトンが自走できるようなところまでは、
なかなか引き上げあれません。
青木選手がバックギアに入れてアクセルを踏むも、
その場でリヤタイヤが回転しているだけ。
なんどももがいているうちに、畑の作物をちょっと踏みつけてしまいました(農家の方ごめんなさい)
それが山芋っぽくて(たぶんタピオカ?)砕けたイモが、
さらに路面をヌルヌルに滑りやすくする始末。
パジェロと私たちのトライトンの2台を連結して、青木選手のトライトンを引っ張ります。
AXCR2012 LEG3 SS3-2
だってほら、もうこんな路面だもの。
泥の中でもがいたから、マッドガードも外れちゃって。。。
どれくらい時間がたったでしょうか?
とてつもなく長い時間のように感じましたが、
レスキューに要した時間は小一時間といったところでしょうか。
コマ図もドロドロ。
後続のラリーカーがどこに行ってしまったのかも分かりませんが、
私達ほのかには、だれもいません。
正しい道を見つけて、先回りしてしまったのか、それともエスケープしてどこかに行ったのか。
みんなどこに行ってしまったの!?
しかし、この先の道が分からない!!!
私たちはどこへ行けばいいの?